2012年11月9日金曜日

大輔というヤツ


今年の夏、大学の友-大輔-に十数年ぶりに再会した。

同期の大輔は、マウンテンゴリラのような厳つい雰囲気で、大柄ではないがガッチリした体格で、短髪の頭は茶色に脱色され、改造したダックスという原付でバリバリと現れた。それまでの僕の友人には居ないタイプだ。そのくせ、目はキラキラと少年のように輝いているのだ。

授業初日に、彫刻科同期に声を掛け酒を煽った。まぁよく飲む!飲ませる! 静岡出身の大輔は「飲むらー!」と言っては、輪の中心に居た。怖いと言うより、威圧感のある存在だった。大して酒に強くないわいは、早々ダウン。。

しかし、彼の放つ言葉は、妙に刺激的な個性を持ち、厳しさと優しさを持っていて魅力的だった。男らしいというか、兄貴分というか。とにかく頼りがいのあるヤツなのだ。

大輔の家に行くと、小説と漫画が山のように積み上げられている。本棚に整理されている訳ではない。かと言って、無造作に積み上げられているのでもない。ただひたすらに、きちっと整理されては、縦横に積み上げられているのだ。床から。

わいが、本を読めるようになったのは、大輔のおかげ。彼の魅力的な言葉の裏には本があったと感じたからだ。


結局、いつもつるむ仲間というよりは、憧れに満ちているのに負けたくないヤツになった。


とにかく、良く飲んだ。そして、いつも大輔との話題は刺激的に繰り返された。くだらねぇ話しをしては良く笑い、真剣な話しをしてはお互い腹の底まで、いじり合った。刺激的な思春期だった。そしていつも彼の魅力に嫉妬していた。いつも負けているような悔しさもあった。


大学3年のころだったか、授業外のブロンズ鋳造のゼミを、わいが中心になって企画進行することになった。お金を集めたり、日程を調整したり、先生達に協力を要請したりと忙しくも、まぁ充実して1ヶ月以上のプランが進行して、最終日は高温で溶けたブロンズを型に鋳込み終了した。その夜に参加者全員で打ち上げを、小さな研究室でギュウギュウ詰めでやった。

数人の後輩が思うように制作が進まず苛立っていた。やる気はあったようだが、結果として鋳造はうまくいかなかった。はっきり言って、それは後輩らの段取り不足だったが、わいも責任を感じて申し訳なかったし、でも、自分のせいだろとも思っていた。その場の雰囲気は最悪だ。

なんか、そんなすっきりしない打ち上げの時、大輔が「お前は良くやったぜ」とぽろっと傍で言ったのだ。たったそれだけで、わいは涙と嗚咽が止まらなくなってしまった。

周りは、「なべちゃんのせいじゃないよ」とか空気を察して言って励ましてくれたが、全くの勘違いだ。わいは大輔が認めてくれた嬉し涙だったんだから。本気で泣いたわ。笑えなかったから、歓喜の涙でもないけど。


大学で一番影響を受けた大輔という親友(ヤツ)


静岡で展示会をしていたから、この夏見に行った。仕事で使う水道管を用いて表現していた。「普段オレの仕事は壁や土の下に隠れて見えねぇんだ。でもカッコいいんだぜ」って一番身近な商売道具と灯りで表現していた。ずっと自己表現なんてしてないのに、急に作りたくなったんだって。自然に。

十数年ぶりに会った大輔は、わいの目からひと時も目を離さないんだ。男に見つめられて恥ずかしくて目を逸らすなんて、ありえんやろ。わいも35歳やで。


あの頃より、明らかに大人で、魅力を増した大輔。その目はやっぱり少年だったなぁ。元気で居てくれてありがとう。また会おうぜ。



作品を見るとき、真ん中に入って見るんだぜ。って教えてくれた。
なんじゃ!?あったかいじゃねーか!お前は灯りか!?

やっぱり悔しいじゃねーかよ!(笑)