2013年4月14日日曜日

O君の引出物


2月のある日、後輩のO君からお電話頂きました。
「結婚する事になりました」と。

O君は、どちらかと言うと物静かなタイプ。
自分の主張を声高々に、さも格好良く語る男ではない。

でも、その姿には信頼に足る何かを持っているのだ。

炎のように情熱的な男が居たとする。そんな男は一見、誰の目にも魅力的だ。
しかし、彼は水のような男だ。
水が流れるように静かに、だが力強く人の心を動かす魅力をもっている。
そんな彼が結婚するって、嬉しいよなぁ!

そんな彼から引出物のご依頼を頂いた。O君のご配慮に心より感謝申し上げ、慎んでお受けさせて頂いた。


しかし、どんなものがいいか。
列席者の方に喜んで使って頂けるうつわ。そのうつわを使う度に、二人を思い出させてくれるようなオリジナリティー。。

少し時間を頂き、「鉢(皿)」の提案でご了承頂いた。

まだ見ぬ二人の新しい生活に、私すらまだ見ぬ新しいうつわを贈りたいと思った。

粘土を練り、1.8kgの粘土玉を70個作った。ロクロもガンガンひく。5種類のカタチをベースにバリエーションを探った。半乾燥させて削り。そして完全乾燥させる。3月上旬はまだ気温も低く、晴天で屋外に出しても3日はかかる。雨が降ったら、もう全然乾かない。。

その間に釉薬の試作をしては焼き、改良しては焼くを繰り返す。そして、気が付けば桜が芽吹き始めた。

出来るだけ大きい鉢にしてあげたいと思っていたら、微妙に効率良く窯に入らない。。。
やっちまったらしい(笑)さて、こりゃー窯焚き練チャンリレーだわ。

今回の窯焚きはパターン化してるので失敗の恐れは少ない。
しかし何が起こるかわからない。祈るような気持ちで、
否、実際祈りながら窯を焚き続けた。
取ってつけたようですが、二人の幸せもしっかりお祈りさせて頂きました。

春の暖かさと匂いを感じるようになり、今年は例年になく見事に桜が満開になった。

出来上がったうつわをO君と彼女に見てもらった。その瞬間に、二人とも目を見開いて「おーっ!」と喜んでくれた。 この瞬間に全て報われたのだ!

今回の作品は、桜の薄紅と幹の素朴な色味をイメージしたツートンカラーにしました。

このうつわが、二人の幸せと共に末長くご愛用頂けるよう祈っております。
ありがとうございました。